2014年9月24日水曜日

イギリスの陶磁器と日本


ヴィンテージセラミックフェア(10月6日—18日)では、主に1960−70年代のイギリスの陶磁器を展示いたします。今日はそんなイギリスの陶磁器の歴史について少々(?)うんちくを。。

釧路は、その霧の深さから「日本のロンドン」と呼ばれていますが、日本とイギリス、遠いようでいて、実は陶磁器を通じて深い繋がりがあります。
17世紀までのイングランドでは、オランダの影響を受けたデルフト陶器(写真3)の生産が盛んでしたが、そもそもこのデルフト陶器の出自には、当時ヨーロッパ諸国に向けて輸出されていた伊万里焼の影響があります(写真4)。


また、17〜18世紀にかけてスリップウェアという重厚な陶器の皿や鍋が生産されていました(写真5)。当時、スリップウェアは庶民の雑器として普及しましたが、産業革命の大量生産化による技術革新の煽りを受けて完全に廃れてしまいました。この忘れ去られた陶器に再び脚光を向けたのは、20世紀初頭、手仕事による日用品の中に「用の美」を見い出した日本の思想家、柳宗悦率いる民芸運動でした。


今回のヴィンテージセラミックフェアでご紹介する器のほとんどは、新しい思想や表現が社会に反映されていた1960−70年代に生産されたもので、上記のものよりぐっと現代に近づき、そのつくりやデザインもより洗練されモダンです(写真2)。 しかし、そんな現代デザインの過渡期に生まれた器は、ポップで鋭利な実験性を秘めながら主張し過ぎず、過渡期ゆえの「ユルさ」も見え隠れする、可愛らしいユーモアに溢れています。
敢えて前に押し出さない、控えめな知性を大切にするのは、騎士道の精神を受け継いだイギリス人ならではのセンスと思います。そんなところが日本人と通底しているとも思うのですが、いかがでしょうか。

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