こしょ
筒井康隆 著 本の森の狩人 岩波新書 275
「天才、筒井康隆おにいさま」と田辺聖子さんが、なにかのエッセイで書いていたのが印象に残っています。
最初のページから一字一句追わずに、パラッパラッと、いい加減に流し見しながら、時折ハッとするような文言に心打たれる本がありますが、本書もその一冊です。
「悪」について語るジョルジュ・バタイユの文芸評論を挙げながら、ジャン・ジュネの「泥棒日記」に出てくる「下劣で偽善的で、儲けになる時には卑劣になり、卑屈で残忍な悪意のかたまりであるアルマン」を、その余りに打算的な卑劣さゆえに退けているバタイユに対して、筒井さんはこう言ってのけます。
「おれは芸術的であろうとなかろうと、悪とは本来アルマンのようでなければならないと思っている。みみっちく、卑しく、より多くの人間に迷惑をかけ、より多くの人間から憎まれることこそ悪の本懐だと思うのだがいかがなものか。(ジョルジュ・バタイユ『文学と悪』ー芸術における悪)」
こちょこ
萬古焼 煎茶碗 明治時代
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