こしょ
高峰秀子 編 おいしいはなし ちくま文庫「私は常々、自分の職務をしっかりやれる人は、食べものに対してもしっかりした舌を持っているし、食べものに対して情熱をかたむける人は、仕事に対しても猛然と情熱を燃やす人だ、と信じている。(はじめに 高峰秀子)」
子役時代は「デコちゃん」の愛称で親しまれ、やがて昭和を代表する女優に、引退後はエッセイストとして知られた高峰秀子が選んだ、食にまつわる「おいしい文章」集です。
北野武「食べることは排泄と同じ」沢村貞子「私のお弁当」など興味をそそる筆者とタイトルが並んでいて、どの文章から食べようかと迷ってしまいます。
「日本に帰って、いちばん先に作ったのものは、海苔弁である。
まずおいしいご飯を炊く。
十分に蒸らしてから、塗りのお弁当箱にふわりと三分の一ほど平らにつめる。かつお節を醤油でしめらせたものを、うすく敷き、その上に火取って八枚切りにした海苔をのせる。これを三回くりかえし、いちばん上に、蓋にくっつかないよう、ごはん粒をひとならべするようにほんの少し、ごはんをのせてから、蓋をして、五分ほど蒸らしていただく。(食らわんか 向田邦子)」
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