フリーカップとして、お茶からお酒、おつまみやちょっとしたお惣菜など何でも入れていただけます。
そば猪口は江戸時代のはじめに、上流階級の人間のために つくられた「チョク」と呼ばれた向付(会席などに用いられ、刺身や酢の物を入れる器)に端を発します。
磁器が庶民化するとともに、やがて屋台のそば屋でつゆを入れる器として「そば猪口」と呼ばれるようになり、用途も広がり、より一般的な器へと変遷を遂げていきました。
しかし、明治維新以降、西洋文化が流れ込んでくるとともに、旧来の文化や江戸時代の意匠は「古くさいもの」として急速に廃れてしまいます。そば猪口もまた、そのあおりを受けて明治時代に衰微し、大正時代には完全に作られなくなりました。
写真のそば猪口は、その 歴史の中でも晩期にあたり、既に需要がなくなってきていたのか、作りも実にザツいです。内側には磁器焼成の際に用いられる砂が付着していたり、緑色の丸紋 は青の下絵を塗りつぶすように描かれており、当時の職人がまるで ヤケクソでこしらえたような作行きです。しかし、そこもまた人間 らしいというか、今のプロトタイプのように型抜きで押し出される工業製品とは違い、血の通った風合いがあります。